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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)428号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一一審原告が本件土地を所有していること、良作が昭和二八年三月二七日一審原告から北部土地を非堅固建物の所有を目的とし期間一〇年と定めて賃借したこと、良作が昭和五五年九月一四日に死亡し、良作訴訟承継人らがその権利義務を相続したこと、良作訴訟承継人らは北部土地上に第一建物を所有し、本件土地を占有していること、南部土地上に第二建物があること、以上の事実は当事者間に争いがない。

二右北部土地賃貸借契約による借地権の存続期間は、借地法二条、一一条の規定により三〇年であるところ、一審原告は、右契約には新築同意特約が存し、良作がこれに違反した旨主張する。しかしながら、この点については、当裁判所も、原審と同様、右特約の存在は証拠上認めることができず、したがつて右特約違反を理由とする契約解除の主張は失当であると判断する。右認定の理由は、原判決一〇枚目表五行目から一一枚目表四行目までに説示されたところと同一であるから、これを引用する(ただし、原判決一〇枚目表七行目の「甲第六ないし第八号証」から九行目の「右証拠資料のみでは」までを、「甲第八号証及び原審証人茂木光枝の証言によれば、良作は第一建物の新築に先立ち一審原告の承諾を求めた事実が認められ、右事実は右主張を裏付けるかのように見える。しかしながら、他方において下記のような事情が存在することが認められ、右事情を併せ考えると、右認定事実のみでは」と改める。)。

三一審原告は、旧第一建物は昭和五三年七月三〇日までには朽廃すべかりしものであつたから、右時点において北部土地の借地権は消滅した旨主張する。しかし、この点についても、当裁判所は、右建物が右時点までに朽廃すべかりしものであつたと認定することはできず、右主張は失当であると判断する。この点の事実認定の理由は、原判決一一枚目表八行目から一二枚目表六行目までに説示されたところと同一であるから、これを引用する(ただし、原判決一一枚目表末行、裏一行目の「検証の結果」の次に「、当審における良作訴訟承継人茂木光枝の証言」を加え、同裏九、一〇行目の「現に被告良作夫婦の居宅として使用されている状態である」を「茂木光枝らによつて使用されている」と、同一二枚目表四行自の「困難であり、」から六行目の終りまでを「困難である。」とそれぞれ改める。)。

四良作が昭和五〇年八月ごろ旧第一建物を取り壊し、その跡の北部土地に第一建物を建築したこと、前橋地方裁判所が一審原告の申請に基づき良作を債務者として一審原告主張のような内容の仮処分命令を発し、それが同月二二日執行されたことは、当事者間に争いがない。

一審原告は、右仮処分命令のうち北部土地を執行官の保管としたうえ現状不変更を条件として債務者に使用を許すべき旨を定めた部分は、良作に対し現状不変更の不作為を命じたものであり、それにもかかわらず良作が建築工事を続行したのは、一審原告に対する甚しい背信行為であり、北部土地賃貸借契約の解除事由に当たる旨主張する。

しかしながら、前記認定のとおり、右賃貸借契約には新築同意特約が付されていなかつたのであるから、良作が北部土地に建物を新築することは、なんら賃貸借契約に違反する行為ではなく、したがつて一審原告の仮処分申請は元来その被保全権利を欠くものであつたといわなければならない。もとより、実体的に被保全権利を欠く仮処分命令であつても、いつたん発せられた以上、債務者としてこれに従うべき義務があることは当然であり、右義務に違反した場合には、当該仮処分を再度執行され、あるいは更に強力な仮処分の執行を受けるなどの形で義務履行を強制されるのが通常の成行きであるが、右義務は、直接には裁判所に対するところの義務であり、本件におけるようにそもそも仮処分の被保全権利が欠けている場合、実体的には仮処分自体が不当なのであるから、右義務に違反しても、それが直ちに仮処分債権者に対する義務違反あるいは背信行為に当たるということはできない。したがつて、前記仮処分命令が現状不変更の不作為命令を含むものであるとしても、良作がこれに違反したことを理由として一審原告は前記賃貸借契約を解除することはできないものといわなければならない。

(倉田卓次 加茂紀久男 大島崇志)

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